適当でのんびりな恐竜。

ECOフリ鯖で蠢いている緑色恐竜の寝言。

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卵んもすなる文体診断ロゴーンといふものを、

恐竜もしてみむとてするなり。
『文体診断ロゴーン』




 紅葉。

 確かあれは、小学校の三年生か四年生の時だったろうか。
 何かの授業で「小さな秋を見つけてみよう」というのを行った記憶がある。
 ちょうど風邪が流行っている時期で、僕たちの班は、僕と彼女の二人しかいなかった。
 何があるかなと二人で話し合っていた時に、突然彼女が両手を合わせて嬉しそうに目を細めたのだ。
「どうかしたの?」
 尋ねると、掌をひらひらと揺らして顔を近づけるように手招きしてきた。
 僕が素直に従うと、彼女は僕の耳元に口を寄せてボソッと囁いた。
「しってる?」
「なにを?」
「んっとね、えと、……もみじが、あかいりゆう」
 当時、僕は本の虫だった。色々な本を読んで、そこから得た知識を語るのが大好きだった。
 だから僕は、彼女に語ったのだ。紅葉が赤い理由を、科学的に。
 すると一転、楽しそうだった彼女は顔を顰め、そっぽを向いてしまった。
 彼女の吐息で濡れた耳が、教室の空気に触れて急激に冷やされる。
「そゆことじゃないんだけどな」
「だって本に」
「そゆことじゃないの。そーいう、きょうかしょにあることじゃ、なくてっ!」
 真っ赤な頬を膨らませて、潤んだ瞳で睨まれた。
 何が何だか分からなくて、僕は思わず「ごめん」と謝ってしまった。

 十年以上経った今でも、彼女が語ろうとした紅葉が赤い理由を僕は知らない。
 その本人に尋ねようにも、彼女は親の仕事の都合で引っ越してしまって、今は顔も名前も忘れてしまった。
 ただこの季節になると、舞い散る紅葉を見かけるたびに当時のやり取りを思い出してしまうのだ。
 彼女のあの赤い頬を。
 彼女の吐息に触れた耳の冷たさを。
 今思えば、あの時に抱いたモヤモヤとした気持ちは、初恋というやつだったのかもしれない。
 もしかしたら、紅葉が赤い理由は恋愛絡みの何かだったのだろうか。
 そうだとすれば、初恋が紅葉なのだとすれば、舞い散る紅葉は、初恋は叶わないという暗喩だろうか。
 自嘲気味に笑う。
 僕は土の上の紅葉を踏みしめて、ゆっくりと歩いている。


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